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マシュマロのエイワが挑むScope 3算定:Zeroboard導入で「点」から「面」への脱炭素経営へ

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マシュマロのエイワが挑むScope 3算定:Zeroboard導入で「点」から「面」への脱炭素経営へ

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お話をうかがった方(肩書は取材時)

代表取締役副社長

今井一馬様


「2050年カーボンニュートラル社会」の実現に向け、気候変動・脱炭素社会への対応が急務となる中、製造業中心にGHG(温室効果ガス)排出量の算定・可視化から削減への取り組みが求められています。特に、サプライチェーン上の他社の活動に起因する排出量であるScope 3の算定は煩雑ではある一方で、自社の企業価値に変換できる取り組みでもあります。今回はマシュマロ菓子の国内トップシェアを誇る株式会社エイワ様に、Zeroboardを活用して取り組む算定と開示についてお話を伺いました。


  • 課題・背景
    • 環境配慮や省エネの取り組みが「点」になっていたため、それを繋げることで「面」で開示できるようにしたかった
    • 菓子関連の組合の中で先陣を切って脱炭素に取り組み、組合に対して脱炭素の啓蒙をしたかった
  • ゼロボードに決めた理由
    • 信頼ある取引先の岩谷産業からの紹介により、ゼロボード一択だった
    • 結果が見られるダッシュボードをそのまま開示に使用したかった


  • 導入後の効果
    • 排出量算定に先行して取り組んだことで、選ばれる土台に乗ることができた
    • 品質・納期だけなく、商品に「ストーリー」が加わることで、新たな価値が生まれた

──Zeroboardを知った経緯と、算定システム導入を検討されていた背景を教えていただけますか。

今井一馬 様(以下、今井様):弊社の会長小高の方針で、10年前から環境配慮対応を始めました。具体的には、重油をプロパンガスに変更することや工場照明のLED化、自家消費のための太陽光パネル設置などです。ただ「いいことやっているね」で終わっていて、全て「点」の措置だったんですよね。その「点」を可視化して「面」として公開できるようにしたいと思いました。

あるとき会長の小高から、GHG排出量の算定にも取り組みたいと相談がありました。ちょうどその時日経新聞で、Zeroboardのサービス開始の記事を拝見しました。そこで取引先の岩谷産業様(※ゼロボードのパートナー企業)に相談したというのが最初です。

──小高会長はなぜ早くから取り組もうとされたのでしょうか。

今井様:小高は全日本菓子工業協同組合連合会や一般社団法人全日本菓子輸出促進協議会(JAPAN TACOM)の理事長を努めています。自らが率先して脱炭素経営に取り組み、組合全体に対して啓蒙したい、そして組合内に取り組みを広げていきたいという想いを持っていました。子供たちの夢を育む菓子メーカーが、GHG排出で未来を潰してはいけないですからね。

ZeroboardでのGHG排出量算定に取り組むタイミングで、並行してISO-14001(※)も取得することを決めました。排出量削減の目標を設定し継続・改善を行い、環境のマネジメントシステムと合体させ経営に組み込むことを目指しました。

──大手企業様との取引も多くお持ちかと思いますが、取引先や市場から脱炭素化のプレッシャーは感じていらっしゃいますでしょうか。

今井様:感じますね。大手小売からはCDP回答の依頼が来たり、サステナブルな菓子製造の依頼が来たりしています。弊社は多くのOEM製造を受託していますので、大手企業からの要請には応える必要がありますし、そういったプレッシャーは大きくなっています。

金融機関からも環境配慮対応については確認されます。その際は国際規格であるISO-14001で取り組んでいること、そのためにScope 1〜3の算定についてZeroboardを利用していると伝えることで、弊社の取り組みを理解していただけています。そういった信頼ある回答ができるのも取り組んだメリットですね。

削減余地を把握するため、物量算定で排出量の精緻化へ

──ZeroboardではScope 1〜3まで、2期分の算定を終えられました。その結果からどのような削減をされるのか、今後取り組まれる算定方法を教えてください。

今井様:Zeroboardを利用して算定することで、原料ごとのGHG排出量が把握できたという状態です。現在は仕入れ金額ベースでの算定なので、今後はIDEAを活用した物量算定に移行し排出量を精緻化する予定です。

削減についてですが、Scope 1,2のインパクトは小さいですが、削減に取り組まなければならないと思っています。LED化や太陽光などすでに「点」では取り組んでいたので、今後の取り組みに関しては検討しているところです。

Scope 3の方は、主に使用原料および使用材料の取引先の協力を得ながら削減に向けて取り組んで行かなければならないと考えています。
特に包材は強度や品質保持の問題があったり、製造する際に粉塵が舞うため、プラスチックから紙への移行が難しくもあります。コストがかかり過ぎて、現状では移行は難しいところではあります。

――システムを利用することで持っていた課題は解決されましたか。

今井様:Zeroboardを導入するタイミングでは、Scope 1〜3などの概念もそもそもありませんでした。時を同じくして、取引先からCDPの回答依頼がき始めたので、これは今脱炭素に取り組むタイミングが来たんだと捉えました。

最初にデータを変換するのは、とても手間がかかる部分です。また、重量別に算定する際に区分を選別する作業があります。ここまでができるとシステムでの算定が非常に楽になります。ゼロボードさんがここの設定を非常に手厚くサポートしてくださって、本当に助かりました。ここをやっていただけるのといただけないのとは、全然違います。本当にありがたいです。

算定業務は、部署を横断した3R《リデュース(Reduce)、リユース(Reuse)、リサイクル(Recycle)》推進委員会メンバーで算定に取り組んでいます。委員会は2ヶ月に1回開催していて、私がISO委員会を含めて統括しています。
毎月1回はZeroboardに入力しているのと、委員会の全員がシステムに触れる機会ができるように運用しています。

商品の品質だけでなく「ストーリー」でお客様の心を動かしたい

──算定に取り組んで感じるメリットは?

今井様:Zeroboardで算定した結果が、簡単にグラフで開示できるようになったので、社外へのレポートが簡単にできるようになったことが非常に良かった点です。

実際に取引が増えたということはありませんが、先行して取り組んでいたおかげで、今後取捨選択される社会になった際に、選んでいただけるステージには乗ったかなと思っています。それが今後のために重要だと思っています。

将来的にはプラントベースの菓子開発にも意欲を見せる今井副社長

 ──今後の目標を教えてください。

今井様:CO2排出量の前期比2%減を目標にしています。売り上げが上がると総量は上がってしまいます。ただし、現実的に達成できる目標への努力はしていく必要があると思いますので、1億円当たりのCO2を減らす(Scope 1〜3)ことを目標に掲げています。この2%というのも低い目標であるとは思いません。

しっかりと売り上げを作りながら、設備更新などに投資を行い、CO2の削減や原単位の改善をしていきたいと考えています。

──取り組みをどのように社外へPRされていますか。

今井様:ホームページをリニューアルしたいと考えています。再使用できないコーンスターチを養鶏場にお譲りし、それを用いて生産された卵を弊社がいただくなど、資源の循環を心がけています。この卵は商品には使わないのですが、社員食堂のメニューに利用しています。また、やむを得ず余剰となった商品については、さまざまなところに寄付しており、なるべく廃棄量を減らす取り組みをしています。

脱炭素と合わせて、こういった取り組みも含めて、ホームページに掲載しようと考えています。そういった部分を含めて我々の企業を知ってもらうことによって、事業に深みが出ると思っています。

商品そのものだけではなく、「ストーリー」でもお買い求めいただく。そうなるといいなと思っています。
社会の変化を敏感にキャッチし、社会の要請にしっかり応えていく。商流に乗ることも重要だと考えています。
また、採用の面でも学生の興味が環境対応にもあることをとても感じていますので、取り組んでいることをしっかりと開示していくことが弊社の優位性につながると思います。

弊社は長野県の安曇野市という、水が綺麗で豊富な場所に工場があります。その自然を守りながら事業を続けていくことがとても大切で、地域に貢献しながら事業を継続していきたいですね。







(左)主要製品のマシュマロ菓子  (右)工場が位置する安曇野市の自然

――本日はありがとうございました。継続してご支援させていただきます。


(※)ISO-14001:組織が環境への影響を管理し、環境パフォーマンスを向上させるための国際規格。組織が環境方針を定め、環境マネジメントシステムを構築・運用・改善していくための要求事項を定めている。


記載の内容は、2025年7月に取材した内容です。

関係者のコメント

株式会社ゼロボード カスタマーサクセス本部
支援実績:未上場企業からスタンダード市場企業まで、また主に製造業、物流業の企業様をサポート


小川幹太

エイワ様の算定支援では、Scope3上流カテゴリ算定用のテンプレート設定に特に重点を置き、お客様と密に協議を重ねながら進めさせていただきました。エイワ様のデータ収集状況に合わせた算定手法の提案や運用設定を行うよう心がけました。

今後はZeroboard上でScope3 Category1の物量データを円滑に入力できる運用体制の整備に注力いたします。また、エイワ様の事業展開に応じたZeroboardの機能活用をご提案し、継続的なご支援をさせていただきます。