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原貿易株式会社

「人と環境に優しいことをしよう」を浸透させたことで、全従業員がサステナビリティの提案者に。脱炭素経営が中小企業にもたらした4つの効果とは

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ご担当者

代表取締役社長

江守 雅人 様


脱炭素・SDGs営業担当リーダー

重田 真由子 様


非財務情報の開示が義務化されていない中小企業の中にも、大手顔負けの脱炭素経営を推進し、新規取引先の増加や採用力の強化、社内コミュニケーションの活性化を実現している企業があります。「Zeroboard」を導入いただいている原貿易株式会社は従業員25名という少数精鋭で成果をあげている中小企業の一つです。SDGsへの取り組みをきっかけに脱炭素経営を始めた背景や取り組み内容、得られた効果についてお聞きしました。




  • 脱炭素経営に取組み始めた背景
    • 書籍『第5の競争軸』と出会い「環境・サステナビリティ」を経営理念に明文化
    • 上場企業への開示義務の流れが中小企業にも来ると予測
  • 取り組み内容
    • 価格より環境を意識した商品PRとSDGs や脱炭素の普及活動
    • 中小企業版SBT 認証の取得
    • 「Zeroboard」 を使ったGHG 排出量の算定・可視化と公表
    • 再エネ電力の導入
  • 得られた効果
    • 大手企業を含めた新規取引先の増加 
    • 講演・取材によるPR機会のアップ
    •  社内コミュニケーションの活性化、従業員のモチベーション向上
    •  採用力の強化

一冊の本との出会いがきっかけとなり「環境・サステナビリティ」を軸とした経営がスタート

技術推進部門 住宅企画推進室 主任 増井 圭悟様


――脱炭素経営に取り組み始めるまでの経緯を教えてください。

江守様:弊社は繊維製品やリユーストナーカートリッジを中心に取り扱う専門商社です。繊維商社なのになぜ印刷関係のことをやっているの?と聞かれることがあります。当社は繊維商社から始まり、来年70周年を迎えます。以前は、布にスクリーンプリントする工場も持っていて、繊維と印刷の両方に関わりがあり、タイプライターのリボン生地を欧米に輸出する仕事もしていました。印刷事業の中でレーザープリンターに必要なトナーカートリッジを再利用するビジネスを1990年ぐらいに先代の社長が見つけてきました。部品交換をするために部材関係も扱うようになり、結果的に繊維製品とトナーという2つの事業ドメインになりました。

欧米ではトナーカートリッジの再利用が進んでいたので、私たちも部材を販売するだけではなくリユーストナーカートリッジを扱うようになり、啓発に取り組むようになりました。トナーカートリッジは再利用することで3,4回使えます。純正品を1回だけ使って捨てていたらもったいない。純正品とリユーストナーカートリッジが共存していく形を目指しています。脱炭素経営を明確に打ち出す前から、事業そのものはCO2削減に貢献していたわけです。

――脱炭素経営に取り組み始めたきっかけを教えてください。

江守様:2009年に社長に就任して、今後の事業成長を考えたときに、企業理念を明確にして社員に浸透させていくことが大事だと考えました。そうした中で出会った本が『第5の競争軸(ピーター・D・ピーダーセン著)』です。2009年の段階で『「自己変革力」「マーケットシェア」「品質」「価格」に加え、「環境・サステナビリティ戦略」こそが新たな競争力として決定的となる』と書かれていました。また、上場企業に非財務情報の開示義務が課せられることを知り、中小企業にもCO2排出量の算定と開示の必要性が生じると予測しました。

リユーストナーカートリッジの事業を始めていて、せっかく環境に良いことをしているのだから経営理念に入れようと考えました。そしてミッションの一つとして「私達は環境に配慮した省資源、省力化を創造し、資源循環型社会への転換に貢献します」と謳い、明文化しました。これが脱炭素経営の始まりです。パーパスは社員と一緒に作り、社内でも積極的に話をするようにしていたら、多くの会社から評価されるようになりました。『世界の人達との架け橋となって人と環境に優しい価値ある情報と商品を「カチッ!」と提供する』。社員と一緒に取り組むべきことを明確にしたことが起点となって、会社が大きく変わっていくことになります。

「Zeroboard」でGHG 排出量を可視化し、SBT認証を取得

脱炭素・SDGs営業担当リーダー 重田 真由子様


――脱炭素経営のために取り組んだ内容について教えてください。

江守様:「普及活動」「SBT認証取得」「Zeroboard でGHG 排出量の可視化」「再エネ電力導入」が主な取り組みです。私たちが扱っているリユーストナーカートリッジは使っていただくだけでCO2を削減できます。せっかく環境に良いことをやっているのだから、皆さんに使ってもらうためにプロモーションしたいと考えるようになりました。純正品と比較して安いという話をするだけではなくて、付加価値として環境に優しいことを謳っていくことに決めました。SDGsが採択された3年後、2018年から環境面のメッセージを強く打ち出すようになりました。

脱炭素経営を進めていると、中小企業の経営者向けの集まりなどで講演を頼まれることが増えてきました。徐々に「SDGsって何をやったらいいの?」と質問されるようになり、リーフレットを作りました。脱炭素とSDGsについて当社の取り組みをまとめ、普及活動をしています。当社の売上に直接的につなげることよりも、まずは脱炭素やSDGsについて知っていただくために貢献したいという想いで取り組んでいます。

――SBT認証を取得されています。中小企業にとってはハードルが高いと思っている方も多いようですが、どのような流れで取り組まれたのでしょうか。

江守様:SDGsへの取り組みを進める中で脱炭素の重要性を重視するようになり、会社の取り組みを公的に認めてもらうことが必要だと認識しました。

重田様:調べていくとTCFDやRE100などいろいろな枠組みがあることを知り、なかでも中小企業版のSBTは私たちも取得できそうということがわかりました。すぐに準備をすすめ、2022年に取得しました。それ以前には、横浜市のSDGs認定制度「Y-SDGs」や「かながわSDGsパートナー」の認定を取得して、一つずつ取り組みを前に進めてきました。

――「Zeroboard」 を使ってGHG 排出量の算定を始めた理由を教えてください。

重田様:CO2の見える化は環境省の指針を参考にすれば、自前でもできます。しかし「Zeroboard」を使うことによって第三者のお墨付きのある、信頼性の高い情報として発信することができます。また当社のデータを入力するだけでGHGプロトコルに基づいた確かな数字が出てくるので手間も削減できます。確かなツールである「Zeroboard」を使うことで、信頼性のある情報を出している安心感があります。

――CO2排出量の削減に関してはどのように進められていますか。

重田様:オフィスと物流センターに再エネを導入しました。電気のことは管理部門が管轄しているので、担当者と相談しながら進めました。電気代が高くなる懸念はありましたが、実際にコストを試算すると納得できる数字だったので、導入を決めました。

江守様:従業員25名の規模なので、サステナビリティ専門部署を立ち上げることは難しかったため、既存の部署を使って兼務体制を作りました。組織体制からではなく、事業の延長線上でサステナビリティやSDGsに取り組んだことが中小企業にとっての良い手法だったと思います。

(左)中小企業版SBT認証取得 (右)温室効果ガス排出量データ

脱炭素経営で4つの効果「新規取引先増加」「PR機会アップ」「社内コミュニケーション活性化」「採用力強化」

――さまざまな取り組みの結果、どのような効果が得られましたか。

江守様:「新規取引先の増加」「PR機会のアップ」「社内コミュニケーションの活性化」「採用力の強化」など思っていた以上の効果がありました。

SBTを取ってみると、大企業と同じ土俵でやっていると認められるようになりました。上場企業の役員からは「うちの会社ではまだあまり環境への取り組みができていないけれど、会社の規模に関係なく、できることから始めているのはいいですね。学ばせてもらっています」との声をいただきました。周りからの評価は従業員にとっても励みになりますし、私たちの規模の会社でもできることがあるなと実感しています。まずはできることから始めてみることが重要です。

また、環境に配慮した会社だと認識されるようになることで信頼性が向上し、取引先として選んでもらえる機会が増えています。実際に、SDGsに積極的に取り組んでいる企業が集まる交流会に行くと、環境への感度が高い方ばかりなので話が通りやすいです。サステナビリティやSDGsに関心のある企業にターゲットを絞って営業すれば、お互いの理解が早いので契約に至りやすいですね。売上げは後でついてくるものだと考えていますが、すでに環境への取り組みがきっかけとなり新規契約につながった事例は少なくありません。

企業のPRにも効果がでています。環境問題への取り組みやSDGsとかけ合わせて商品をお伝えすることで、メディアの取材や講演の話をいただく機会が増えました。3年前くらいからメディアへの露出は年々倍増しています。

当社のリユーストナーカートリッジのように、環境に良い商品やサービスを持っている中小企業がたくさんあります。しかし何もしないと世の中から注目されず、自己満足で終わってしまいます。そうなると社員の頑張りも報われないので、企業PRができる機会はとても大事だと考えています。

――脱炭素への取り組みが社内コミュニケーション活性化や採用力の強化のきっかけになっているようですね。

江守様:脱炭素経営を進めた結果、社内のさまざまな部署から自然とアイディアが出てくるようになりました。例えば海外調達のチームからバイオ燃料を使うというアイディアが出てきたり、サステナブルな素材を使う取り組みが進んだり、配送の積載効率を上げるためにまとめて出荷するようにしたり、社員が脱炭素に対する意識を高めるきっかけになっていますね。結果的に仕事の効率化にもつながってきます。

(上段左・中、下段左)社員全員で拡充に取り組んでいるサステナブル商品のパンフレット 
(上段右・下段右)SDGsや脱炭素の文脈で伝えるリユーストナーカートリッジのパンフレット

重田様:脱炭素やSDGsの取り組みが共通の話題になっているので、社内のコミュニケーションが自然と活性化しました。「社長が講演をしたみたいだけど、どういう話をしたの?」「新商品は脱炭素になるの?」といった会話が部署を横断して社内で飛び交うようになっています。社員のモチベーションアップに効果が出ていると感じます。

江守様:当社は女性が65%と多く、子育て世代も多いです。育児や介護などもある中で、在宅勤務など新しい働き方を取り入れるためには「お互いさま、おかげさま、ありがとう」を感じられる風土作りが大事です。脱炭素への取り組みを社内で情報共有することで、感謝と思いやりを大切にする風土が生まれている実感があります。

江守様:採用にも効果が出ています。SDGsに取り組んでいる企業に入りたいと考えて、当社の取り組みに共感して入社してくれた社員もいます。社会性の高い会社だと思ったことが決め手だと話してくれました。

2022年度入社 機能部材・製品部 日髙裕斗様 
周りの学生も、社会性を軸に就職活動する人が増えたと話す

――今後の展望を教えてください。

江守様:私が脱炭素経営に取り組んでうれしかったことは、社員が会社のことを家族に話してくれたり、安心して働ける会社だと言ってもらえることです。

事業を通じて脱炭素に貢献する。脱炭素への取り組みによって自立した人材が育ち、さらに社会に貢献する。好循環を生みだしながら、人と地球環境の両方に優しい社を目指していきます。

ありがとうございました。貴社の取り組みがさらに良い循環を築いていかれるよう、引き続きご支援させていただきます。



関係者のコメント

株式会社ゼロボード

営業本部 

第二エンタープライズ営業部

八木 順也
広告代理店、外資系金融機関、VRのスタートアップを経て、「次世代に地球を繋げたい」という思いからゼロボードへ入社。ゼロボードではさまざまな業種や規模の企業に対して脱炭素経営の必要性をお伝えし、「Zeroboard」を活用した脱炭素経営をご支援しています。 ――脱炭素経営に積極的に取り組まれている原貿易様に「Zeroboard」をご活用いただいていることを大変嬉しく思っております。 脱炭素への取り組みを企業価値向上にどのように繋げられるかは、多くの企業が共通の課題と捉えていると認識しています。新規取引先の増加やPR機会の向上などの効果を具体的に実現している原貿易様の事例は、他の企業にとって大いに参考になると思います。 今後も原貿易様の取り組みを全力で支援してまいります。