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業務効率化とSSBJ開示対応や第三者認証取得にむけたガバナンス強化を両立――東京メトロがZeroboardで実現した770拠点のGHG管理

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業務効率化とSSBJ開示対応や第三者認証取得にむけたガバナンス強化を両立――東京メトロがZeroboardで実現した770拠点のGHG管理

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お話をうかがった方(肩書は取材時)

サステナビリティ推進部 統括事務係

本多 文也様


企業のGHG排出量管理では、単に集計効率を高めるだけでなく、証跡管理やアクセス制御などによりガバナンスを確保することが重要です。東京メトロでは、「Zeroboard」導入を通じて、770拠点分のGHGデータを一元管理。データの可視化と証跡管理の強化により、SSBJ開示対応や第三者認証取得に必要な透明性・正確性を確保しながら、業務効率化も同時に実現しています 。本記事では、導入の背景やガバナンス強化のポイント、運用効果についてお伺いしました。

  • 課題・ 導入背景

    ・各部門から提出されたExcelデータを手作業で集計しており、作業負荷が大きかった
    ・活動内容と証跡の紐づけや、最新版データの確認に時間を要していた
    ・集計業務が属人化しており、担当者以外が状況を把握しづらかった

  • ゼロボードに決めた理由

    ・入力画面を既存のExcel集約シート形式に近づけられるなど、柔軟にカスタマイズでき、現場の負担を増やさず導入できた
    ・入力から承認までの流れを可視化でき、ガバナンスを効かせたデータ管理が実現できると感じた
    ・サポート対応が丁寧で、安心して自走運用体制を構築できると判断した

  • 導入効果・今後期待される効果

    ・データ集約作業が大幅に効率化し、集計業務にかかっていた作業時間が約1週間から1日へと1/7に短縮
    ・証跡データと算定データを一元管理でき、整合性確認の手間や属人化が解消
    ・アクセス権限の設定により、セキュリティと透明性ある管理を両立できた

東京メトロが目指す脱炭素社会とサステナビリティ経営の取り組み

―― まず、貴社の脱炭素に関する取り組みについて教えてください。

東京メトロは東京都区部を中心に9路線の地下鉄を運営し、首都圏鉄道ネットワークの中核を担う企業です。2024年には東証プライム市場に上場し、2025年度からは3か年の中期経営計画に基づき、安全性・サービス向上や新線建設、自動運転などの新技術導入、都市・生活創造事業の拡大に取り組んでいます。環境面では、CO2排出量50%削減目標を2027年度に前倒し、2030年度には53%削減を目指すなど、脱炭素社会の実現に注力しています。

―― 本多様の社内での役割についても簡単にお聞かせください。

サステナビリティ推進部では、非財務面から東京メトログループ全体の企業価値向上を目指し、環境・社会・経済の持続可能性に配慮したサステナビリティ経営の戦略策定や環境関連施策の推進を行っています。その中でも特に「脱炭素・循環型社会の実現」に向けた取組みの推進と情報開示を中心に担当しています。

―― そうした中で、GHG排出量の算定業務にはどのような課題があったのでしょうか。

従来は、各部門から集めたExcelの活動データを手作業で集約・集計していたため、管理や処理が非常に煩雑でした。膨大なデータの集約作業は属人化しており、入力ミスにも気づきにくい状態でした。また、Excelでは拠点単位での詳細な集計が難しく、部門単位で合算された値を計上しているケースもあったため、内訳の把握や収集漏れの懸念がありました。さらに複数のファイルやバージョンが乱立しており、最新版を確認するだけでも時間がかかる状況で、削減効果も実感しにくい状態でした。

現場負担を増やすことなく ガバナンスと業務効率化を両立したGHG管理

―― GHG排出量算定ツールの導入を検討された背景や目的を教えてください。

導入を検討した背景としては、会社として求められるSSBJ対応や統合報告書などの情報開示のためのデータ集計の早期化・効率化や第三者認証の取得を進める方針が大きく影響しています。それに伴って、データの正確性を高めつつ、グループ全体のデータ集約や集計のスピードを向上させる必要がありました。また、各グループ会社のGHG排出量を可視化し、排出量を認識してもらうことも狙いとしてありました。

―― 数あるツールの中からZeroboardを選ばれた理由をお聞かせください。

Zeroboardは自由度が非常に高く、入力画面を柔軟にカスタマイズできる点が大きな決め手でした。それまで集約に利用していた既存のExcelシートに合わせて入力インターフェースを作りこむことができたので、実務者の負担を増やすことなくスムーズに移行できました。また、証跡の紐づけやアクセス制御により、データの出所や更新履歴の把握が容易になり、ガバナンスが強化されました。

システム上での可視化管理で、証跡管理とアクセス制御によるガバナンス強化と全体の透明性向上

―― 算定対象拠点が770拠点あると伺いましたが、実際に導入してGHG排出量の集計や管理業務にはどのような変化がありましたか。

Zeroboard導入後は、GHG排出量データの集計や管理が大幅に効率化されました。これまでは各部門からの活動データを集めてExcelでまとめる作業に約1週間を要していましたが、今はグループ会社を含む770拠点分のデータを一元管理できるようになり、集約作業も1日で完了できるようになりました。結果として、作業時間はおよそ1/7に短縮されています。証跡アップロード機能のおかげで、複数のフォルダを行き来して確認する手間やストレスも解消され、データと証跡の紐づけが標準化されたことで、特定担当者しか状況を把握できていなかった問題も解消されました。

―― 導入によって、運用面やチームの働き方にどのような効果がありましたか?

拠点情報や活動量の一括エクスポート機能や、各拠点のリアルタイムの進捗状況の確認も可能になり、全体管理の効率化が進んでいます。データの細分化により拠点ごとの内訳が明確になり、不整合や誤りを早期に発見・修正できるようになった点も大きな成果です。結果として、データ精度の向上にもつながり、チーム全体の負担が軽減され、精神的な余裕も生まれました。

―― 情報管理面での安心感も高まりましたか?

はい。進捗状況がシステム上で可視化され、ガバナンスを効かせた管理が可能になりました。常に最新情報を一元把握でき、アクセス制限の設定管理も非常に便利です。必要な人だけがアクセスできるので、情報漏えいリスクも抑えられ、大きなメリットだと感じています。さらに、拠点単位での詳細なデータ管理が可能になったことで、報告漏れのリスクも軽減され、削減効果を実感しやすくなりました。その結果、改善策の検討もスピーディーに進められるようになっています。

770拠点のGHG排出量データを効率的に管理する運用体制と自走運用のポイント

―― 全社で770拠点分のデータを扱う中で、運用体制はどのように整えられましたか。

Zeroboard上でやり取りが完結するため、Excelや証跡添付のメールでの提出といった煩雑な作業もなくなりました。

また、導入初年度は通常アカウント1つで運用していましたが、2年目からはグループ全体でのガバナンス強化やセキュリティ向上を図るため、連結炭素会計機能付きアカウントへ移行しました。その結果、グループ全体の可視化やセキュリティ強化、管理体制の一元化が可能になり、運用の手間やリスクを大幅に削減できました。

連結炭素会計アカウントに切り替えたことで、事務局側として得られたメリットはグループ会社ごとにCO2排出量を可視化することができたことです。また、各社の担当者にとっても自分たちの取り組みの成果を視覚的に確認できるようになったのは初めてであり、このような可視化を通して組織内で共通認識を持つことで、目的意識の向上につながるものと期待しています。

―― 導入後、システムの定着や社内展開はどのように進められたのでしょうか?

導入2年目以降は算定支援を利用せず、自社でGHG排出量算定の運用を進めています。自走体制を整える際には、システム知識や操作スキルの蓄積が十分でないことから運用遅延のリスクがありました。しかし、不明点はシステムのFAQやお問い合わせ窓口を活用することで迅速に解決でき、チーム内で回答を共有することで課題の早期解決にもつながっています。このように、丁寧なサポート体制とチーム内の情報共有・連携が、自走運用を支える重要なポイントとなっています。

―― 東証プライム上場企業としての内部統制や開示対応の面で、Zeroboardの活用で役立った点はありましたか?

統合報告書での開示やEEGS登録用(*1)にも活用しています。具体的には、温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度の定期報告書用XML元データ作成ツールの一部を使用することで、開示や投資家対応を効率的に進めることができました。このように、データの正確性や一元管理だけでなく、会社として求められる第三者認証取得やSSBJ開示対応の実務にも開示の早期化や内部統制の強化の面で貢献しています。

(*1)「省エネ法・温対法・フロン法電子報告システム」への利用申請および登録

データ可視化と効率化を進め、経営判断に生かす体制づくりを推進-GHG排出量可視化とデータ効率化で進める中長期の脱炭素施策

―― 今後、Zeroboardをどのように活用していきたいとお考えですか?

現状はデータ管理に重点を置いていますが、将来的には報告書生成機能(*2)をフル活用し、CSV加工への依存を解消することを目指しています。省エネ法対応について2025年度は、Zeroboardシステム内の報告データ出力機能を活用し、ダウンロードしたXMLファイルの一部を参照してEEGS(*1)へ入力しました。今後は、CSV加工せずにダウンロードしたXMLファイルをそのままEEGSへアップロードすることを目指しています。また、ダッシュボードによる可視化を活用し、各部門の環境意識向上にもつなげたいです。

(*2)Zeroboardシステム内のEEGS連携用レポート作成機能

―― 長期的な環境目標達成や、グループ全体での取組み推進に向けての展望をお聞かせください。

長期的には、環境目標の達成に向けて、省エネ車両導入や再生可能エネルギーの採用、非化石証書調達、コーポレートPPAの導入を進めております。また、太陽光発電システムや電力貯蔵装置の設置、変電所における電圧の適正化、業務用自動車の電動化、ICTを活用した再エネ導入推進など、多角的な取り組みを展開し、グループ全体で持続可能な社会の実現を目指しています。

ユーザーの声を反映した定期的な機能アップデートで常に最適なGHG管理を

―― 最後に、同じようにGHG排出量の算定や可視化に課題を感じている企業様へ、一言メッセージをいただけますでしょうか。

Zeroboardにはシステム内に「機能・仕様へのフィードバック機能」があり、ユーザーの皆さんの声を反映したシステム改善が定期的に行われている点が素晴らしいなと感じています。ユーザーコミュニティ「All Aboard!」のメンバー向けに配信される機能紹介や便利なTips紹介のウェビナーにも定期的に参加しておりますが、機能アップデートの速さに追いつくのが大変なほどです。

現時点では高度な活用には至っていませんが、GHG排出量の算定や可視化におけるリソース不足の課題に対し、クラウドサービスは業務効率や算定精度の向上に有効だと実感しています。また、ゼロボード の丁寧なサポート対応が精神的な安心感につながり、担当者にとって大きな支えとなっています。

自社の状況やニーズ、活用期間、メリット・コストを慎重にご検討されると良いと思います。

※支援内容はご契約いただくプランやオプションによって異なります。
ゼロボードではお客様のニーズに合わせて、勉強会の実施や入力代行などを含め、様々なオプションのご案内も行っております。