Scope 3算定においてIDEA(イデア)データをどう活用する?排出量算定の“これから”に備える

SSBJによる開示基準への対応をはじめ、国内外でサプライチェーン排出量を巡る動きが活発化し、Scope 3算定の必要性が高まっています。
算定は1次データ(実測値)を収集する方法と、2次データ(業界平均値などを基にしたデータベース)を活用する方法がありますが、1次データは収集が困難で業務負荷も大きいことから、2次データを用いるのが一般的となっています。2次データにはいくつか種類がありますが、物量ベースでの算定に取り組む企業で採用されているのがAIST-IDEA*¹です。
*1 2024年4月に正式名称をAIST-IDEAに変更。
Scope 3の精緻な算定に必須!環境省も推奨するAIST-IDEAデータベースとは
インベントリデータベース「AIST-IDEA」とは?
原材料採取から廃棄に至るまでのライフサイクルを通じて排出される環境負荷をデータ化したものをインベントリデータといいます。
国立研究開発法人 産業技術総合研究所が主導で開発したAIST-IDEAは、膨大な数のインベントリデータを格納したデータベースです。ライフサイクルの各段階における資源やエネルギーを反映させた積み上げベースのデータで、以下の特徴が精度の高さを裏付けています。
【透明性】データの根拠となる入出力データを公開、プロセスが見える設計になっている。
【網羅性】5600のデータセットを収録し、日本のほぼ全ての経済活動をカバー。
【完全性】オゾン層破壊、有害化学物質の発生など、18の環境影響領域の評価が可能。
【代表性】日本標準産業分類をはじめとした日本の統計データに基づき、国内の平均的な製造方法やサービスを反映。
なお2025年4月時点で提供されているAIST-IDEAはVer.3(最新版はVer.3.5)です。
かつて環境省が特殊ライセンスの配布事業を実施していたこともあり、前世代のVer.2シリーズの係数を用いる企業も多くいましたが、この配布事業が停止となったことや2024年7月末をもってVer.2の公式サポートが終了したこと等を受けVer.3への切り替えが推奨されています。
IDEA利用を特に推奨するScope 3、カテゴリ3・5の実態
Scope 3はScope 1(自社の直接排出)、Scope 2(購入エネルギーの使用による間接排出)を除くすべてのGHG排出量が対象となります。
15のカテゴリーに分類されるScope 3の算定では、国が発行するガイドライン等に準じて各カテゴリーで使用する排出係数・原単位を選択します。その中でカテゴリ3・5については別途IDEAの係数を取得して算定することが推奨されてきました。最新のガイドラインにおいては代替値などが公表されるようになりましたが、排出係数の品質などを鑑みて最新のIDEA係数を使用することが望ましい状況にあります。
今、検討すべき対応策とは?
IDEAの正しい使い方
AIST-IDEAのデータは1年契約のライセンス購入により提供されています。また環境省によって配布されているVer.2.3(特殊ライセンス)についても1年間という利用期限が定められており、契約期間・利用期間を正しく把握し取り扱う必要があります。
AIST-IDEAの更新は契約終了日の3か月前から行うことが可能なので、継続使用の必要がある場合は早めに契約更新しておきましょう。
Scope 3算定は継続的に取り組み、推移を把握していくことが重要です。その中で信頼性の高いAIST-IDEAは算定に欠かせないデータベースであり、正しく使えるように整備しておくことは、今後を見据えた脱炭素対策の一手になると考えます。
業界初のシステム標準搭載、「産総研AIST-IDEA Zeroboard限定パッケージ」
AIST-IDEAの必要性は感じていても、フルパッケージでの購入や費用負担がネックになっているご担当者も多いのではないでしょうか?
ゼロボード限定パッケージは、LCAを主目的に通常約5,300項目を1セットとして販売されているIDEAデータベースのうち、サプライチェーン排出量の算定に便利な約400項目のみで構成されており、当社のLCAエキスパートが監修したものです。IDEAを独自監修したデータベースの構築と、IDEAのGHG排出量算定ツールへの標準搭載はいずれも業界初です。
プリセットされたIDEAデータベースは、バージョン更新に併せて最新の係数がシステム側で自動更新されるため、業務効率化の面からもユーザー企業の算定をサポートするパッケージです。
ガバナンスの効いたデータ管理を得意とするZeroboardならではのシステムで、ユーザー企業のAIST-IDEA運用とデータ品質の向上をサポートしてまいります。


【参考元】
サプライチェーン排出量とは?(環境省)https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/SC_gaiyou_20230301.pdf
1次データを活用したサプライチェーン排出量算定ガイド - 「削減努力が反映されるScope3排出量算定」へ - (環境省)
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/tools/1ji_data_v1.0.pdfScope 3排出量とは(環境省)https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/estimate_03.html
サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための 排出原単位について(Ver.3.5)(環境省)https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/tools/unit_outline_V3-5.pdf
排出原単位データベース(環境省)https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/estimate_05.html

