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コラム

企業サステナビリティ・デュー・ディリジェンス指令(CSDDD)とは何か? 企業にとっての重要性と対応の必要性

目次

1. CSDDDの概要

企業サステナビリティ・デュー・ディリジェンス指令(Corporate Sustainability Due Diligence Directive, CSDDD)は、欧州連合(EU)が策定する企業の人権および環境デュー・ディリジェンス(DD)を義務化する法規制です。本指令は、企業が自社のサプライチェーン全体における人権・環境への悪影響を評価し、予防・是正措置を講じることを求めるものであり、2024年4月24日に欧州議会で正式採択されました*1)

CSDDDの法的基盤は、2011年に国連が発表した「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいており、企業活動の持続可能性を確保するための枠組みとして位置付けられています。これにより、企業は法的なコンプライアンスを強化するとともに、国際市場における競争力向上を図ることが求められています。

2. CSDDDの適用範囲と対象企業

(1) 規制対象企業と適用範囲

CSDDDは、従業員数1,000人超かつ全世界の純売上高が4億5,000万ユーロを超えるEU企業に適用されます。また、EU域外の企業(日本企業を含む)も、前年度にEU域内で4億5,000万ユーロ以上の純売上を計上した場合、適用対象となります*2) 

この適用範囲の広さにより、多くの多国籍企業が影響を受けることになり、日本企業も例外ではありません。特にEU市場で事業展開を行っている企業は、自社が直接適用対象となるかどうかの確認が必要です。

(2) バリューチェーン全体への影響

CSDDDの特徴的な点は、企業単体だけでなく、サプライチェーン全体に対してもデュー・ディリジェンスの義務が課されることです。企業は、上流の原材料供給者から下流の販売網に至るまで、バリューチェーン全体で環境・人権リスクを管理する責任を負います。

これにより、直接的な取引先のみならず、サプライヤーの管理体制や環境負荷削減への取り組みも精査する必要があり、企業の調達戦略やパートナーシップ構築に影響を与えます。

3. CSDDDの求める具体的な取り組み

(1) 人権・環境デュー・ディリジェンス(DD)の実施

企業は、事業活動が環境や社会に及ぼすリスクを特定・評価し、リスクを回避または軽減する取り組みを求められます。これには、強制労働や児童労働の防止、森林破壊や水資源の乱用防止などが含まれます。

(2) ステークホルダーエンゲージメントの強化

企業は、サプライヤーや従業員、投資家、地域社会などのステークホルダーと対話し、デュー・ディリジェンスプロセスの透明性を確保する必要があります。特に、苦情処理メカニズムの整備が求められます。

(3) 移行計画の策定と開示

CSDDDでは、企業に対し、パリ協定の1.5℃目標およびEUの2050年気候中立目標と整合する形での移行計画の策定・実施が義務付けられています。企業は、具体的な温室効果ガス削減目標を設定し、それを開示する必要があります。

4. CSDDDの影響とリスク

(1) ESG投資の拡大

近年、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資が急速に拡大しており、機関投資家や金融機関は、企業のサステナビリティ対応を評価基準の一つとしています。CSDDDに対応することで、企業は投資家からの信頼を獲得し、持続可能な成長を実現しやすくなります。

(2) 法規制の強化と罰則リスク

CSDDD違反企業には制裁が科される可能性があり*3)、企業のブランド価値や評判にも深刻な影響を与えかねません。具体的な罰則の内容はEU加盟国ごとに定められる予定です。また、各国の国内法としての実施が進むことで、対応の遅れは市場競争力の低下につながる可能性があります。

5. 企業が今後取るべき対応

1.CSDDD適用対象の確認

  • 自社が規制対象となるかどうかの詳細な分析を実施する。

  • 直接的な対象外であっても、サプライチェーンを通じた間接的影響を検討する

2.デュー・ディリジェンス体制の強化

  • 人権・環境影響評価の枠組みを構築し、定期的なリスクアセスメントを実施する

  • サプライヤー管理のための基準を明確化し、取引先と協力してリスク削減に努める。

3.移行計画の策定と開示

  • パリ協定目標と整合する形での気候変動対策を策定。

  • 具体的な削減目標や実施計画を策定し、透明性をもって開示。

6. まとめ

CSDDDは、企業の持続可能な成長とリスク管理の観点から非常に重要な法規制であり、特にEU市場に関わる企業は対応が必須となります。CSDDDの適用は2027年7月26日から段階的に開始される予定であり*4)、企業は適用時期を見据えて準備を進める必要があります

適用対象となる企業はもちろん、サプライチェーンの一部として関与する企業も、今後の規制強化を見据えた対応が必要です。CSDDDへの準備を進めることが、持続可能な企業経営の鍵となります。



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【参照元】

*1,2,3)欧州議会公式サイト「Due diligence: MEPs adopt rules for firms on human rights and environment(人権と環境に関する企業の責任―欧州議会がデュー・ディリジェンス義務を採択)」https://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20240419IPR20585/due-diligence-meps-adopt-rules-for-firms-on-human-rights-and-environment

*4)EU理事会公式文書(文書番号:ST 6145/2024)https://data.consilium.europa.eu/doc/document/ST-6145-2024-INIT/en/pdf