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CO2排出係数とは?計算方法・SHK制度対応・基礎/調整後の違いをわかりやすく解説

目次

「サステナビリティ推進部に配属されたけれど、専門用語が多くてわからない」「CO2排出量の算定を任されたが、毎年変わる係数についていけない」

企業の脱炭素経営が加速する2026年現在、このような悩みを抱える担当者の方は少なくありません。CO2排出量の算定において、最も基本的かつ重要なカギを握るのが「CO2排出係数」です。

CO2排出係数は一見シンプルな概念に見えますが、実際には制度や算定目的によって考え方や種類が異なります。法定報告に用いる係数、国際基準に基づく係数、削減努力を反映する係数など、その整理を正しく理解していないと、算定や開示で混乱が生じます。

本記事では、CO2排出係数の基礎知識から計算方法を整理した上で、日本のSHK制度(温対法)における「基礎」と「調整後」の違い、令和6年度・7年度報告における最新の法改正対応までをわかりやすく解説します。

CO2排出係数とは?わかりやすく解説

基本的な定義

CO2排出係数(排出原単位)とは、ある活動を行った際に、どれくらいのCO2(二酸化炭素)が排出されるかを表す数値のことです。

例えば、電気であれば「1kWh発電するのに何kgのCO2が出たか」、ガソリンであれば「1リットル燃焼するのに何kgのCO2が出たか」を示します。 主な単位は以下の通りです。

  • 電気:kg-CO₂/kWh(1キロワットアワーあたりの排出量)
  • 燃料(ガソリン等):kg-CO₂/L(1リットルあたりの排出量)など。

なぜ排出係数が必要なのか

企業が自社の事業活動による環境負荷を可視化するためには、活動量(電気使用量やガソリン使用量など)を「CO2排出量」という共通の指標に換算する必要があります。その換算に不可欠なのが排出係数です。

また、「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」により、一定規模以上の事業者は排出量を国へ報告する義務があります。近年では、GX(グリーントランスフォーメーション)推進法に基づく排出量取引制度(GX-ETS)の本格稼働や、サステナビリティ開示基準(SSBJ)への対応においても、正確な係数を用いた算定が求められています。

CO2排出量の計算方法【基本の計算式】

計算式:活動量 × 排出係数

CO2排出量の計算は、非常にシンプルです。以下の基本式で求められます。

CO2排出量 = 活動量 × CO2排出係数

【計算例】 例えば、オフィスで1ヶ月に10,000kWhの電気を使用し、契約している電力会社の排出係数が0.000457 t-CO₂/kWhだった場合:

10,000 (kWh) × 0.000457 (t-CO₂/kWh) = 4.57 t-CO₂

このように、活動量に係数を掛けるだけで排出量が算出できます。

Scope1, 2, 3との関係

企業の排出量は「Scope(スコープ)」という区分で管理されますが、いずれの区分でも排出係数を使用します。

  • Scope1(直接排出): 自社でガソリンや都市ガスを燃やした際の排出。燃料ごとの排出係数を使用。
  • Scope2(エネルギー起源の間接排出): 購入した電気の使用による排出。電力会社の排出係数を使用。
  • Scope3(その他の間接排出): 原材料の調達や製品の使用など。活動内容に応じた様々なデータベースの排出係数(排出原単位)を使用。

「基礎排出係数」と「調整後排出係数」の違いとは?

日本のSHK制度(温対法)では、電力の排出係数を「基礎排出係数」と「調整後排出係数」に区分しています。この2つの違いは、実務担当者が最も混乱しやすいポイントの一つです。正しく理解しておきましょう。

基礎排出係数

電力会社が発電する際に排出したCO2量を、販売電力量で割った数値です。 発電所の電源構成(火力、水力、原子力など)に依存するため、火力発電の比率が高い電力会社ほど数値は高くなります。

調整後排出係数

基礎排出係数に、「環境価値」(非化石証書やJ-クレジットなど)を反映して調整した数値です。 再生可能エネルギー比率の高いプランを契約している場合や、証書を購入している場合は、この数値が低く(あるいはゼロに)なります。

ロケーション基準とマーケット基準との違い

電力の排出係数を理解するうえで、国際的な算定基準である GHG Protocol の考え方も押さえておくと整理しやすくなります。

GHGプロトコルでは、Scope2(購入電力)の算定方法として、次の2つの基準を定めています。

  • ロケーション基準:地域全体の平均的な電源構成に基づく排出係数を用いる方法
  • マーケット基準:契約している電力プランや環境証書などを反映した排出係数を用いる方法

日本のSHK制度(温対法)における「基礎排出係数」はロケーション基準に近い考え方であり、「調整後排出係数」はマーケット基準に近い概念と整理できます。

ただし、両者は制度目的や算定ルールが完全に一致するわけではありません。法定報告、任意開示、国際開示など、目的に応じて適切な係数を選択することが重要です。

どちらを使えばいい?

温対法に基づく報告(SHK制度)では、「基礎排出係数」と「調整後排出係数」の両方を用いて算定し、報告する必要があります。

  • 基礎排出量: 事業活動の実態としての排出量を把握するため。
  • 調整後排出量: 再エネ導入などの削減努力を反映した排出量を評価するため。企業の削減目標(SBTやRE100など)の達成状況を示すには、通常こちらが重視されます。

【2026年最新版】CO2排出係数一覧の調べ方

環境省・経産省の公表データを見る

電力会社の排出係数は、毎年、環境省と経済産業省から公表されます。 「電気事業者別排出係数一覧」として、各電力会社(小売電気事業者)ごとの最新の係数が掲載されています。

• 調べ方: 環境省「温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度」※1のウェブサイト内にある「算定方法・排出係数一覧」ページを確認します。

排出係数は毎年変わる点に注意

排出係数は固定値ではありません。電力会社の電源構成の変化や、法制度の見直しにより毎年更新されます。 算定を行う際は、必ず対象年度に対応した最新の係数を使用しなければなりません。古い係数を使うと算定ミスとなり、外部報告の信頼性を損なうリスクがあります。

【重要】SHK制度(温対法)、令和6年度・7年度報告以降の変更点

算定担当者が今、最も注意すべきなのが近年の制度変更です。令和6年度(2024年度実績)報告から、SHK制度(温対法)において重要な変更が適用されています。

算定対象や区分の見直し

令和6年度報告より、以下のような変更が行われています。

1. 「ガソリン」の名称と係数の変更: 名称が「揮発油」に変更され、係数の数値も更新されています。

2. 廃棄物の燃料使用の位置づけ変更: 従来はエネルギー起源CO2に含まれなかった廃棄物の原燃料使用(廃プラスチックなどの廃棄物を燃料として利用すること)が、エネルギー起源CO2として報告が必要になりました。

3. 都市ガス・熱供給の事業者別係数の導入: 電気だけでなく、都市ガスや熱供給についても、事業者ごとの個別係数を用いて算定することが求められるようになりました。

令和7年度報告からの変更(電気の基礎排出係数)

さらに、環境省の公表資料によれば、令和7年度報告(2025年度実績分)から、電気の基礎排出係数の算出方法が変更となり、基礎排出係数についてもメニュー別での公表・算定が可能になるなどの見直しが行われています。 従来の「全電源平均」的な考え方から、より契約プランの実態を反映できる仕組みへと進化していますが、これは同時に「どの係数を使うべきか」の判断がより複雑化していることを意味します。

担当者が気をつけるべきこと

これらの変更により、「昨年と同じエクセルシートに入力すればOK」というやり方は通用しなくなっています。特に、事業者別係数の適用拡大により、契約しているガス会社ごとの係数を個別に管理する必要が出てきました。

排出係数の違いを踏まえたCO2排出量の削減方法

CO2排出量を減らすには、「活動量(使用量)を減らす」か「排出係数を下げる」かの2つのアプローチがあります。

排出係数の低い電力会社・プランへの切り替え

同じ電気使用量でも、排出係数の低い電力会社や、再エネ100%プラン(CO2フリープラン)に切り替えるだけで、計算上のCO2排出量を大幅に削減(あるいはゼロに)できます。これは即効性のある削減手段として多くの企業で採用されています。

省エネと再エネ導入

  • 省エネ: 高効率な設備への更新やLED化で消費電力(活動量)そのものを減らす。
  • 再エネ導入: 太陽光発電設備などを導入し、自家消費すれば、その分の電力は排出係数ゼロとしてカウントできます。

算定業務の課題「係数管理が大変…」を解決するには

ここまで解説した通り、CO2排出係数は非常に奥が深く、管理が煩雑です。

エクセル管理の限界

多くの企業がエクセルで算定を行っていますが、以下のような課題に直面しています。

  • 毎年の係数更新が手作業: 環境省のHPから数百社ある電力会社のデータを検索し、自社の拠点ごとに手入力するのはミスのもとです。
  • 法改正への追随が困難: 「ガソリンが揮発油に変わった」「都市ガスの係数が会社ごとに違う」といった変更をリアルタイムで反映するのは、専任担当者がいない限り困難です。
  • 複雑な拠点管理: 複数の電力会社と契約している場合、拠点ごとに異なる係数を適用し、さらに基礎・調整後の2パターンを計算するのは膨大な工数がかかります。

算定ツールなら自動で最新係数を適用

こうした課題を解決するのが、クラウド型のCO2排出量算定ツールです。

ゼロボードでは、環境省や経産省が公表する最新のデータベースが自動でシステムに搭載・更新されます。 ユーザーは毎月の電気使用量や燃料使用量を入力するだけで、システムが自動的に適切な年度・事業者の排出係数を呼び出し、正確な排出量を計算します。

「令和6年度からの変更点」や「基礎・調整後の算出」にも自動対応しているため、担当者は法改正の細かい内容を調べ回る必要がなくなり、本来の業務である「削減施策の検討」に集中することができます。

まとめ

  • CO2排出係数とは、活動量をCO2排出量に換算するための数値であり、毎年更新されます。
  • 算定には「基礎」と「調整後」の2種類が必要であり、それぞれの違いを理解することが重要です。
  • 令和6年度・7年度報告において、係数の区分や都市ガスの算定方法などに大きな変更がありました。
  • 複雑化する係数管理をエクセルで行うには限界があります。

正確かつ効率的に算定業務を行い、脱炭素経営を加速させるためには、排出係数の自動更新に対応した専用ツールの導入が近道です。

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資料ダウンロード

参考:

※1)環境省「温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度」https://policies.env.go.jp/earth/ghg-santeikohyo/