気候変動枠組条約締約国会議(COP)はどこに向かうのか?
ゼロボード総研 園田 隆克
2024年11月11日から22日、アゼルバイジャンのバクーで開催されたCOP29*1)(気候変動枠組条約第29回締約国会議)は、国連の気候変動対策を推進するための年次会議であり、持続可能な未来に向けた国際的な枠組みを形作る重要な場でした。気候変動やサステナビリティ分野に携わる方々にとって、既におなじみのイベントですよね。
今回、私がアドバイザーを務めているスタートアップが、ジャパンパビリオンで開催されるGOSATをテーマとしたセッション*2)にパネラーとして登壇することから、奇跡的に「アクレディテーション」(いわゆるパスのこと。これがあると、Blue Zone*3)に入場できます。ちなみに、Green Zoneは誰でもOK)が入手できましたので、参加してきました。
しかしながら、期間中、複数の会合が同時開催され、かつ様々なセッションも行われるため、網羅することはとてもできません。さらに、議論の内容や合意の詳細を理解するには、最終的な決定文書を読み解く必要があります。
ですので、コラムでは会議の議題や結果には立ち入りません。その代わり、初めて現地に赴き、会合やセッションに参加、現場の熱気や多様なステークホルダーたちの声に触れ、併せて、ホスト国が提供するサービスを受けたからこそ、得られた個人的な見解を、ご案内したいと思います。
COPはどこに向かうのか
今回のCOPに参加して、「10年後のCOPはどのようになっているのだろうか」と思わずにはいられませんでした。
COP公式の発表*4)によると、昨年のCOP28の約65,000人と比較して減少したとは言え、約32,000人の参加者が登録されているそうです。今年は、主要な金融機関の幹部が参加を見送ったり*5)、フランスやアルゼンチンの主要交渉担当者が会議から撤退する*6)などがあったようです。
COPは期間中、参加者は通い続けますので、ホスト国のロジスティックス負荷は相当なものです。今回、通い詰めて実感しました。
事務局や締約国が国連の規則に基づき負担するとは言え、ホスト国がほとんどの開催費用を負担します。会場だけでなく、空港や地下鉄の駅など、来場者の動線上の代表的なポイントで、ボランティアの方々が案内を行っていました。実際、私も、何度も助けられました。
これだけの負担をホスト国に強いていながら、参加できるのは、環境問題に取り組む各国交渉団や政府関係者、国際機関、環境問題に取り組む企業やNGO/NPOなど、そしてメディアです。
そもそも、環境問題を議論するときには「仲良し会」になりがちだと考えています。
課題を共有しようとする際は、環境に対する「感度」が高い人ばかりが集まります。そこでは、結論、着地点は決まっています。COPについても同様です。もちろん、環境NGO/NPOなどは、議論の方向性をウォッチし、批判を繰り返しますが、目的は各国の交渉団と同じです。(例えば、ドラスティックに変えるのか、ステップを踏んで、フェードイン・フェードアウトしていくのか、それに至るパスについての考え方の違いだと認識しています。
ですが、世界では「感度」が高くない人がマジョリティーなのです。その人たちは、議論の行く末に関心を示すことはありません。激甚災害の増加は感じているものの、支出増に繋がる施策が具現化した際に、初めて気づくことになります。このような「二極化」の存在に、ほとんど気づいていない「感度の高い人」が多いのではないでしょうか。
だからこそ、「COPはどこに向かうのか」という疑問が湧いたのです。
先に述べたように、COPに参加するには「アクレディテーション(Accreditation)」が必要で、特定の人にのみパスが発行されます。誰もが無料で登録できる環境展示会であれば、現在のように、広く呼び掛けて来場してもらい、それぞれが学び、見識を深めていけばよいのですが、COPはそれができない。
それでいて、相当のコストをかけて毎年実施するのであれば、参加が叶った「感度の高い人たち」が「二極化」を認識し、それぞれのネットワークで、COPで得た知見を広めていくことが、来場者に与えられた責務ではないでしょうか。
COP参加者がエバンジェリストの役割を果たす
メディアは、先進国と途上国の対立や化石賞の発表*7)、さらなる資金拠出を迫る環境NGOのパフォーマンスなど、視聴者が求める情報ばかりを報道します。しかし、ほとんどの会合やプレナリーは、ベテランの交渉官が、議長・副議長のファシリテーションの下、淡々と進められます。COPは劇場ではないのです。
今回参加してみて、「やはりな」という思いです。であれば、自分が率先すべきと、第一弾をお届けした次第です。
これ以外にも、さまざまな気づきがありました。回を分けて、お届けしていきたいと思っています。
本コラムは、研究員が独自の調査により執筆するものです。個人の見解であり、必ずしも所属する企業や組織の立場、意見を代表するものではありません。
<参照元>
*1) UN Climate Change Conference Baku - November 2024
https://unfccc.int/cop29*2) GOSATシリーズの新たな展開 - 日本版GHGセンターとビジネスへの活用https://www.env.go.jp/earth/cop/cop29/pavilion/exhibition/details/016/
*3) COP29 Venue
https://cop29.az/en/conference/cop29-venue*4) Initial Registration Figures for COP29 Revealed
https://cop29.az/en/media-hub/news/initial-registration-figures-for-cop29-revealed*5) ‘You only go to the party if everyone is going’: finance bosses to skip COP29
https://www.ft.com/content/f88b53be-0a2a-4dbe-a4a8-f8870ba928a7?utm_source=chatgpt.com*6) France shuns COP29 as divisions deepen at UN climate summit
https://www.ft.com/content/b06ee7d7-bfd2-4fbf-8867-922d87ca49a0?utm_source=chatgpt.com*7)COP29にて日本がG7の一員として「本日の化石賞」を受賞
https://www.can-japan.org/press-release-ja/4058